「パーマとカラー、どっちが髪にダメージが大きいの?」
美容室でもお客様からよくいただく質問です。
この記事では、現役美容師×毛髪診断士が毛髪科学の視点から、
パーマとカラーのダメージの違い・原因・影響範囲を徹底解説します。
🔍 結論:パーマは「内部ダメージ」、カラーは「表面ダメージ」
簡単にまとめると次の通りです。
| 比較項目 | パーマ | カラー |
|---|---|---|
| 主なダメージ層 | コルテックス(髪の内部) | キューティクル+コルテックス表層 |
| ダメージ原因 | 還元・酸化反応による構造破壊 | 酸化・脱色反応によるタンパク質変性 |
| 髪への影響 | 弾力・ハリ・内部強度の低下 | ツヤ・手触り・保湿力の低下 |
| 化学反応 | SS結合の切断と再結合 | メラニンの酸化分解と染料重合 |
| 代表的な症状 | うねり・ゴワつき・広がり | 乾燥・パサつき・退色 |
つまり、
👉 パーマは髪の中身を壊す(構造的ダメージ)
👉 カラーは髪の表面を荒らす(質感ダメージ)
という違いがあります。
🧬 髪の構造を理解しよう(毛髪3層構造)

髪の毛は、次の3層からできています。
| 層 | 名称 | 主な構成 | 役割 |
|---|---|---|---|
| ①キューティクル | 外側 | ケラチン(硬タンパク質) | 外的刺激や摩擦から守るバリア層 |
| ②コルテックス | 中間層 | ケラチン・メラニン・水分・脂質 | 髪の弾力・ツヤ・色を決める中核 |
| ③メデュラ | 中心 | 柔らかいタンパク質(無い人も多い) | 熱や空気の伝導・保温作用 |
💡パーマのダメージ原理:髪の内部構造を変化させる

パーマの仕組みは、**コルテックス内部のシスチン結合(SS結合)**を一度切って再結合させる化学反応です。
① 還元剤による結合の切断
1剤(チオグリコール酸など)が髪内部に浸透し、SS結合を一時的に切断。
髪の形を変えやすい状態にするために、内部の弾力構造がゆるむ。
② 酸化剤による再結合
2剤(臭素酸ナトリウムなど)で再度結合させて形を固定します。
しかし再結合は完全ではなく、一部がズレたまま固まるため、内部の空洞化・脆弱化が進行します。
③ アルカリ膨潤による表面損傷
多くのパーマ剤はpH8〜9のアルカリ性。
キューティクルが開き、タンパク質や脂質が流出することでツヤが低下します。
➡️ 結果:髪の内部がスカスカになり、弾力やハリが失われる。
🎨カラーのダメージ原理:髪の表面とメラニンを酸化させる

カラーの仕組みは、アルカリ剤と酸化剤の反応で髪の中のメラニンを分解・染料を発色させることです。
① アルカリ剤による膨潤とキューティクル開裂
酸化染毛剤はpH9〜10。アンモニアなどがキューティクルを開き、薬剤を内部に浸透させます。
この時点で表面の摩耗・脂質流出・ツヤ低下が始まります。
② 過酸化水素による酸化ダメージ
過酸化水素(H₂O₂)がメラニンを酸化・分解。
同時に染料を酸化重合し、発色させます。
しかし酸化はタンパク質にも作用し、硬化・変性・乾燥を引き起こします。
③ 残留アルカリによる後ダメージ
カラー後も髪内部にアルカリ・酸化剤が残ると、日常生活の中でじわじわ酸化が進行。
➡️ 数日〜1週間後にパサつき・色落ち・手触り悪化が進むのはこのためです。
⚖️ パーマとカラーのダメージ比較まとめ
| 項目 | パーマ | カラー |
|---|---|---|
| 主な作用層 | コルテックス内部 | キューティクル+メラニン層 |
| 化学反応 | 還元→再酸化 | 酸化反応 |
| 主な損傷 | 内部構造の破壊 | タンパク質・脂質の酸化 |
| ダメージの深さ | 深い(内部まで) | 表面的〜中間層 |
| 手触り変化 | 弾力がなくなる・ゴワつく | パサつく・引っかかる |
| 回復難易度 | 高い(構造変化) | 中程度(ケアで補修可) |
💬 美容師の見解:どちらが傷むかは「目的」と「ケア次第」

構造ダメージの深さでいえばパーマの方が重い。
酸化ストレスやツヤ低下でいえばカラーの方が目立ちやすい。
つまり、
「中身が弱るのはパーマ」
「表面が傷むのはカラー」
です。
特にパーマとカラーを同日に行う場合は、
内部と外部を同時に傷めることになるため、
施術の順番・薬剤選定・中間処理が非常に重要です。
🧴 ダメージを最小限に抑えるためにできること
アルカリ除去処理を必ず行う(pHリセット)
還元剤・酸化剤の強さを髪質に合わせて選定する
前処理・中間処理・後処理トリートメントを使う
ホームケアで酸化ストレスを抑える(抗酸化・CMC補修)
パーマとカラーは最低でも1〜2週間空ける
✅ まとめ

パーマは内部構造を壊すため「内部ダメージ」が大きい
カラーは酸化・脱色で「表面ダメージ」が強い
両方を同時に行うと、内外から壊れるため注意が必要
髪質・薬剤・ケア設計によってダメージの感じ方は変わる